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結婚式の席。
新郎新婦の横で、マイクロフォンを握った 腹の出たおじさんがさっきからずっと喋っている。

「人間にはいろいろな人、いろいろな長所や短所を 持った人がおりまして・・・。」

僕の隣に座った先輩はちっとも話しを聞いていないで、 何度も「アイツはきれいなおくさんもらったねえ」 と驚いたような、呆れたような顔をしていう。

「そのようなわけで、人間にはまあいろいろありまして、 えー、スプーンみたいな人もいれば、フォークのような人も いるということです。 でもスプーンてやつは上手にスープをすくうことは出来ても、 何か固いものを食べようって時はちょっと使いづらい。 そんなときフォークはとても便利なんですな。 だけれどもフォークっていうのはスープを飲む時は使いにくい、 てか使えない。 そういうわけで食卓にはスプーンとフォークの 両方が使えるように置いてあるわけで・・・・・。 ・・・・同じようにお二人も・・・助け合い・・・。」

前に立ったおじさんがそんな事を話しているうちに、 新郎新婦がスプーンとフォークに見えてきて、しまいには 誰も彼もがスプーンやフォークのように見えてきてしまった。 仲良く喋っているのはきまってスプーンとフォークのペア。 同じものどうしじゃ喋らないのね。 なんて思っているうちに、隣りに座っていたフォーク(先輩)まで 隣りのスプーンと話していた。

じゃあ僕はなんなんだろう。
スプーンかしらフォークかしら。

果たして向こうの窓ガラスに反射している僕の姿は、マクドナルドのコーヒー に付いているマドラーのような、 スプーンでもフォークでもないペラペラなもので、 僕は当ても無く、スプーンとフォークで溢れかえる式場の中を、 まるでコーヒーをかき混ぜるかのようにグルリグルリと回るのでした。

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